○日光市子どもの権利に関する条例

平成25年3月6日

条例第6号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第7条)

第2章 子どもにとって大切な権利(第8条―第11条)

第3章 権利の保障(第12条―第15条)

第4章 施策の推進(第16条―第20条)

第5章 権利の相談(第21条)

第6章 権利委員会(第22条・第23条)

第7章 雑則(第24条)

附則

すべての子どもは、生まれながらに一人の人間として尊重され、自らの意思で自分の未来を歩んでいく権利を有しています。そして、いかなる場合であっても、自分の権利を阻害されたり、剥奪されることがあってはなりません。

子どもが人として生き、守り育てられ、学び、自分の考えを表明し、社会に参加していくことは当然の権利です。また、自分の権利を知り、他の人の権利も認め、お互いの権利を尊重しあうことにより、人権尊重の意識が生まれるのです。

子どもは社会全体の宝であり、社会全体で子どもの権利を認め、一体となって連携をとり子どもを育てていくことが必要です。そのため、大人は、子どもを守り、子どもが成長する力を育み、子どもを理解し、子どもの最善の利益のために、できる限りの努力をしなければなりません。未来を担う子どもたちが、いきいきと輝き、自己実現を図れる社会を築くことが、大人の責任です。

ここに、日本国憲法や児童の権利に関する条約の基本理念を踏まえ、子どもが社会の一員として尊重され、心豊かにのびのびと健やかに育つことができる「子どもたちの未来がかがやくまち日光市」の実現を目指し、たゆまぬ努力を重ねることを決意し、この条例を制定します。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、子どもの最善の利益を第一に考え、子どもが毎日を自分らしくのびのびと成長していくことができるよう、子どもの権利を明確にし、すべての子どもの人権が尊重される地域社会を実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 子ども 市内に居住し、通勤し、又は通学する18歳未満の者その他これらの者と等しく権利を認めることが適当である者をいう。

(2) 保護者 親及び児童福祉法(昭和22年法律第164号)に規定する里親その他の親に代わり子どもを養育する者をいう。

(3) 育ち学ぶ施設 児童福祉法に規定する児童福祉施設、学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校、専修学校及び各種学校その他の施設のうち、子どもが育ち、学ぶことを目的として通学し、通所し、又は入所する施設をいう。

(4) 施設関係者 育ち学ぶ施設の設置者、管理者及び職員をいう。

(5) 市民 市内に居住し、通勤し、通学する者並びに市内において活動を行う団体及び事業者をいう。

(基本理念)

第3条 すべての子どもは、一人の人間として、その人格及び個性が尊重され、権利が保障されなければならない。

2 すべての子どもは、いかなる場合でも、虐待、いじめ等の不当な扱いを受けることなく、人としての尊厳が守られなければならない。

3 すべての子どもは、自らの権利を自覚するとともに、他人を思いやり、お互いの権利を尊重しなければならない。

4 すべての子どもは、未来を担う大切な宝であり、社会全体で守り、育てなければならない。

5 すべての子どもは、子ども又はその家族の社会的身分、財産、地位等による差別を受けず、平等の権利を享有することが保障されなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、子どもの権利を尊重し、子どもの健やかな成長のための支援に努めなければならない。

2 市は、社会全体で安心して子どもを育てられるよう、関係するあらゆる施策を通して、環境整備に努めなければならない。

3 市は、虐待及びいじめから子どもを守り、その置かれた状況に応じ、必要な支援に努めなければならない。

(市民の責務)

第5条 市民は、その言動が子どもの成長に様々な影響を与えることを認識し、子どもの健やかな成長のための環境づくりに努めなければならない。

2 市民は、市が実施する子どもの権利に関する施策に協力するよう努めなければならない。

(保護者の責務)

第6条 保護者は、子どもの養育に第一義的な責任があることを自覚し、子どもを守り育てるよう努めなければならない。

2 保護者は、子どもと向き合い、子どもの気持ちや考えに耳を傾け、十分に対話するよう努めなければならない。

3 保護者は、子どもが家庭で安心して過ごせる環境を整えるよう努めなければならない。

(子どもの責務)

第7条 子どもは、自分を大切にするとともに、他人を大切にし、基本的な社会のルールを守るよう努めなければならない。

2 子どもは、いじめ及び差別を行ってはならない。また、いじめ及び差別がなくなるよう努めなければならない。

第2章 子どもにとって大切な権利

(生きる権利)

第8条 子どもは、安心して生きるために、次に掲げる権利が保障されなければならない。

(1) あらゆる危険から生命が守られ、平和と安全のもとに暮らすこと。

(2) 愛情をもって育まれること。

(3) かけがえのない自分を大切にすること。

(4) 遊び、学び、及び休息すること。

(5) 健康的な生活を送ること。

(守り守られる権利)

第9条 子どもは、自分を守り、又は自分が守られるために、次に掲げる権利が保障されなければならない。

(1) 虐待、いじめ等から心身が守られること。

(2) 子ども又はその家族の性別、年齢、障がい、文化、国籍等による差別及び不当な不利益を受けないこと。

(3) 自分を守るために必要な情報及び知識を得ること。

(4) 気軽に相談し、適切な支援を受けること。

(5) プライバシーが守られること。

(育つ権利)

第10条 子どもは、様々な経験を通して豊かに成長するために、次に掲げる権利が保障されなければならない。

(1) 個性及び他人との違いを認められ、一人の人間として尊重されること。

(2) 自分の考えを持ち、自由に表現すること。

(3) 自分に関係することを、適切な支援を受けて自分で決めること。

(4) 夢に向かって挑戦すること。

(5) 芸術、文化及びスポーツに触れ親しむこと。

(参加する権利)

第11条 子どもは、自ら社会に参加するために、次に掲げる権利が保障されなければならない。

(1) 家庭、育ち学ぶ施設、地域、行政等のあらゆる場で、自分の意見を表明すること。

(2) 表明した意見について、年齢又は成長に応じてふさわしい配慮がなされること。

(3) 意見を表明し、又は参加するための適切な情報の提供が行われること。

(4) 仲間と集い、共に社会に参加し、社会の一員として行動すること。

第3章 権利の保障

(市における権利の保障)

第12条 市は、保護者が安心して子育てができ、その責任を果たすことができる環境づくりに努めなければならない。

2 市は、虐待及びいじめを受けた子どもを迅速かつ適切な方法で保護し、生命の危険から救済する体制の整備に努めなければならない。

(家庭における権利の保障)

第13条 保護者は、子どもにとって家庭が生活の基礎となる場であることを認識し、その養育する子どもの権利を保障しなければならない。

2 保護者は、虐待、養育放棄及び精神的苦痛を与える行為を行ってはならない。

3 保護者は、保護者の意見等を一方的に押し付けることなく、子どもの自主性を尊重しなければならない。

(育ち学ぶ施設における権利の保障)

第14条 施設関係者は、育ち学ぶ施設が子どもの健やかな成長にとって重要な役割を果たすことを認識し、子どもの人格形成ができる環境づくりに努めなければならない。

2 施設関係者は、子ども、保護者及び市民に施設の運営等に関する情報を提供し、意見を聴き、協力を受けるなど、開かれた施設となるよう努めなければならない。

3 施設関係者は、虐待又はいじめについての相談又は防止のために、関係機関等と連携しなければならない。

(地域における権利の保障)

第15条 市民は、地域が子どもにとって多様な人間関係を通して豊かに育つために大切な場であることを認識し、子どもの権利の保障に努めなければならない。

2 市民は、地域において、子どもが安心して過ごすことができる安全な地域づくりに努めなければならない。

3 市民は、地域において、子どもが自分自身を守る力をつけることができるよう、必要な支援に努めなければならない。

第4章 施策の推進

(子どもの権利の普及)

第16条 市は、市民が子どもの権利について正しく学び、理解を深めることができるよう、その普及に努めなければならない。

2 市は、家庭、育ち学ぶ施設及び地域において、子どもが自分の権利と他人の権利を正しく学び、お互いの権利を尊重し合うことができるよう必要な支援に努めなければならない。

(意見表明・参加の促進)

第17条 市は、市政等について、子どもが意見を表明し、参加する機会を設けるよう努めなければならない。

2 市民は、地域の文化・スポーツ活動等について、子どもが意見を表明し、参加する機会を設けるよう努めなければならない。

3 市民及び市は、子どもの参加の促進を図るため、子どもにかかわる施策、取組み等について、子どもが理解を深め、自分の意見を形成することができるよう、子どもの視点に立った分かりやすい情報発信に努めなければならない。

(子どもの居場所づくりの推進)

第18条 市民は、子どもが安心して自由に遊び、活動し、又は豊かな人間関係を作り合うことができる居場所づくりに努めなければならない。

2 市は、前項の居場所づくりを支援し、その充実に努めなければならない。

(子育て支援の推進)

第19条 市は、市民が安心して子育てをするための必要な支援策を推進するものとする。

(虐待等防止対策の推進)

第20条 市は、施設関係者及び市民と連携を図りながら、子どもに対する虐待及びいじめの未然防止及び早期発見に努めなければならない。

2 子どもは、自らが虐待若しくはいじめを受けたとき又は虐待若しくはいじめを受けていると思われる他の子どもを発見したときは、市又は関係機関に相談又は通告することができる。

3 市民は、虐待又はいじめを受けていると思われる子どもを発見したときは、直ちに市又は関係機関に相談又は通告することができる。

4 市は、関係機関と協力し、虐待又はいじめを受けた子どもに対し、迅速かつ適切な支援を行わなければならない。

第5章 権利の相談

(相談体制)

第21条 市は、子どもに関する相談を行う関係機関及び団体と連携を深め、子どもの育成に係る相談体制の充実に努めなければならない。

2 市は、市民がいつでも相談できる体制を整え、対応するよう努めなければならない。

3 市は、子どもの権利に関する相談体制を広く市民に周知するよう努めなければならない。

第6章 権利委員会

(権利委員会の設置)

第22条 子どもの権利に関する施策の充実を図り、子どもの権利の保障を推進するため、日光市子どもの権利委員会(以下「権利委員会」という。)を置く。

2 権利委員会は、市長その他の執行機関の諮問に応じ、又は必要があるときは自らの判断で、子どもに関する施策における子どもの権利の保障の状況について調査審議する。

3 権利委員会は、子どもの権利に関する施策について、市長その他の執行機関に対し提言することができる。

(権利委員会の組織等)

第23条 権利委員会は、委員15人以内をもって組織する。

2 委員は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する。

(1) 学識経験を有する者

(2) 関係団体等から推薦を受けた者

(3) 市内に在住し、子どもの人権に高い関心と問題意識を有する者

3 委員の任期は、3年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

4 委員は、再任されることができる。

5 前各項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

第7章 雑則

(委任)

第24条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長その他の執行機関が定める。

この条例は、平成25年4月1日から施行する。

日光市子どもの権利に関する条例

平成25年3月6日 条例第6号

(平成25年4月1日施行)

体系情報
第8編 福祉・住民生活/第1章 社会福祉/第6節
沿革情報
平成25年3月6日 条例第6号