輝き人「佐藤則武さん」(広報にっこう2023年3月号)

佐藤則武(さとう・のりたけ)さん

選定保存技術保持者(建造物漆塗)
市内森友在住
職人の技術と思いを、未来へとつなぐ
文化財の選定保存技術「建造物漆塗」の保存団体に、公益財団法人日光社寺文化財保存会(以下、保存会)が、平成28年に認定されています。
そしてこのたび、保存会の佐藤則武さんが選定保存技術「建造物漆塗」の保持者(個人)として日本で初めて追加認定されましたので、お話を伺いました。
選定保存技術…文部科学大臣が選定・認定を行う、文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術・技能のうち、保存の措置を講ずる必要のあるもの。日光社寺文化財保存会は、昭和54年に「建造物彩色」の保存団体にも認定されている
漆塗り職人になったきっかけは?

私は山形県出身で、子どもの頃から絵を描いたり、木でおもちゃを作ったりすることが好きでした。そのため、中学校卒業の際、担任だった美術の先生の勧めもあり、塗装の技術を勉強する学校に進学しました。
卒業後は、埼玉県で百貨店のディスプレイの塗装などに6年ほど携わりました。しかし、自分の塗装した作品が展示替えのため、半年ほどで別の作品に塗り変わっていってしまうことに違和感を感じ、「100年後にも残る仕事、つまり、漆塗りの仕事がしたい」と一念発起し、昭和47年に、保存会の門をたたきました。
これまで行ってきた仕事は?
日光の社寺には、東照宮陽明門をはじめ、110棟の国宝・重要文化財に指定された建造物がありますが、そのうち90棟を超える建造物の塗装や調査に携わりました。
日光以外では、島根県の出雲大社、滋賀県の比叡山延暦寺などで、調査や技術指導を行いました。
印象に残っている仕事は?

どの現場も鮮明に覚えていますが、特に二荒山神社の縁束(えんづか)といわれる場所は初めて一人で仕上げた場所なので思い出深いですね。
また、漆塗りは基本的に古い漆を剥がして、新たに塗るのですが、東照宮東側の透塀(すきべい)の調査の際に、古文書に残る徳川家光公時代の寛永13年(1636年)の塗装箇所を発見した時は驚きました。当時の漆塗りの技術を目にすることができたことと、その仕事が100年どころか、400年も残っていたことに感動しました。
漆塗りの難しいところ・やりがいは?

漆は生き物で、季節や気温で変化するので、塗った漆がどのように乾いていくか、漆と向き合うことにやりがいを感じます。
保存会に入職し、初めて漆を使った際は、漆かぶれになり、目が開いていないように見えるまで顔が腫れ上がりました。その時は先輩に「漆職人は向いていない」と言われましたが、仕事を休むことはありませんでした。やはり漆の仕事が好きなんですよね。
実は今、日光市内で漆の木の栽培にも挑戦しています。漆として使用できるのは10年ほど先になりますが、日光産の漆で日光の社寺が塗装されるのを楽しみにしています。
インタビューを終えて
現在は指導的立場にある佐藤さんですが、「自分ができないことは、他人にやれと言わない」をモットーにしており、記録や書物にあっても、自分で必ず実践することにこだわっているそうです。
世界遺産の登録要件の一つに「真正性」(修復の際に創建当時の素材や工法、構造などが可能な限り保たれていること)があります。まさにその根幹となる、佐藤さんの技術と漆への愛を強く感じました。
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更新日:2024年02月01日