輝き人「日光社寺文化財保存会 ・技師長・原田正彦さん」(広報にっこう2024年12月号)

原田正彦さん

日光社寺文化財保存会 ・技師長・原田正彦さん

原田正彦さん

原田正彦さん

日光社寺文化財保存会技師長

文化財を次世代につなぐ

今年12月、「日光の社寺」が世界遺産に登録されてから25周年を迎えます。世界遺産に認められる条件の一つに、「模造や復元品ではなく本物でなければならない」とあります。世界遺産登録の背景には、日本古来の技術や材料を守り、保存する人たちがいます。今回は、「日光の社寺」の保存活動を手がける日光社寺文化財保存会(以下、保存会という)で技師長を務める原田正彦さんに話を伺いました。

当時の技術を守り抜く

明治元年(1868年)、明治維新によって神仏分離の令が出されると、国内の文化財は明治維新の保護を失いました。それを受けて、当時の町民や幕臣が日光の社寺を守るために「保晃会」を立ち上げました。この体制が現在の保存会の由来ともなっています。保存技術には、彩色・建築漆・木工などがあります。さまざまな技術がある中で、私は設計監理を担当しています。設計監理とは、修復にあたる全体のスケジューリングをすることです。いわば現場監督のようなもので、緊急時や災害時には日程調整もしています。

平成の大修理

東日本最大の木造建築ともいわれる、日光山輪王寺の三仏堂の修理は、平成19年度から令和元年度までかかったことから「平成の大修理」と言われています。しかし、当初は塗装だけの修理で平成22年度には終了する予定でした。およそ10年間修理期間を延ばした理由は、柱の根継ぎ(柱の一部分が腐食した際に、柱全体を入れ替えずに一部分だけ交換すること)作業の際に「虫食い」を発見したからです。これにより塗装修理から解体修理へと切り替わりました。

食害された大瓶束

完全修復への道のり

文化財保存は、なるべく古材を生かしながら修復することを基本としています。そのため、ただ単に柱を一本取り替えるような単純作業ではないため、柱の修理は特に苦労しました。虫食いの正体は「オオナガシバンムシ」といって、柱の内部を繊維に沿って食べ進める性質があります。そのため、外からは、虫食いの部分が見えず、発見に時間がかかるやっかいな虫です。虫食いがあった柱は、古材を生かしながら、新しい木を接ぎ木するなどして修復にあたりました。

オオナガシバンムシの写真

古きを守るために新しき技術を

そのほかにも、虫食いの進行具合などを調べるために、レントゲンや電磁波、超音波などさまざまな手法を試してきました。それもこれも、すべては日光の社寺の受け継がれてきた技術・材料を守り抜くためです。この思いや技術を受け継ぐ人が増えてくれることを願っています。

柱の修復様子

インタビューを終えて

インタビュー中、熱心に当時の修復への思いを語ってくれた原田さん。そこには、文化財とそれに関わった人への敬意があるからこそだと感じました。
ものを継ぐということは、同時に人の思いも継ぐということ。そのような仕事をしている原田さんですが、現在は文化財修理の技師が全国で100人程度しかおらず、実際に必要とする人数はその3倍だそうです。保存会について詳しくは、保存会ホームページを確認してください。
原田正彦さんと他技師さん

この記事に関する問い合わせ先

企画総務部秘書広報課シティプロモーション係
電話番号:0288-21-5135
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