令和6年度施政方針

市政経営の基本方針

私が市長に就任させていただいたこの3年、「夢と希望」を持ち続けることが、当市の更なる魅力向上につながるものと信じ、将来にわたり光り輝く日光市の創造を目指してまいりました。第2次日光市総合計画後期基本計画の2年目である令和5年度は、計画に掲げている施策の積極的な推進と目標の達成に向けて、様々な事業を展開しているところです。

このような中、昨年6月のG7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合では、私が直接各国の代表団の皆さんに日光市の魅力をPRしたほか、市の食材や特産品などによるおもてなしでお迎えいたしました。各国からは、国際会議の開催地としてふさわしいなど日光市の価値を高く評価いただき、国際都市としてのポテンシャルを国内外に広く示すことができました。

また、数年間続いた新型コロナウイルス感染症への対応が緩和されたことに伴い、観光イベントや地域行事が再開したことで、久しぶりにまち全体に賑わいが戻りつつあると実感しているところです。

一方で、昨年末に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の地域別将来推計人口」によると、当市の2050年の人口は4万3,723人と、5年前に同研究所が公表している推計からは減少幅が緩やかになったものの、依然厳しい状況に変わりはありません。

さらに、コロナ禍において縮小した地域経済は、過去に例を見ないほどの物価高騰とも相まって、いまだ回復には至らず、観光業や運輸業などにおける従事者不足といった新たな課題も生じてきております。

今年は、就任4年目、私の任期の集大成の年となります。また、後期基本計画の仕上げに向かう後半戦のスタートの年でもあります。依然として厳しい社会情勢の中、持続可能な日光市を確立していくためには、引き続き「選択」と「集中」を基本とした行財政改革に積極的に取り組むとともに、市民の皆さんと手を携え、誰もが安全安心に暮らすことができる基盤づくりを進めていかなければなりません。

人口減少の進行を抑え、様々な課題や困難に立ち向かっていくため、後期基本計画に掲げた「まちづくり人口の充実」に向けて、重点プロジェクトや重要施策を着実に推進してまいります。

令和6年度予算編成の基本的な考え方

国においては、昨年11月に「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を閣議決定しました。この中で、長く続いたデフレからの完全脱却を「明日は、今日よりよくなる日本」を実現していくための最大の課題として捉え、賃上げや投資が伸びる拡大好循環を実現することを目指すとしております。

また、賃金上昇が物価高騰に追いついていない状況を踏まえ、国民に支援を行うことで、不安定な足元を固め、物価高から生活を守るとしています。

当市においても、こうした国の考えと歩調を合わせ、令和5年度補正予算において、物価高騰に対する市民や事業者の皆さんへの支援策を講じてきたところです。

令和6年度についても、物価高騰の影響を受け、一般行政経費が大きく増加する中、市民の皆さんへの負担を最小限にとどめるため、基金の有効活用等により、先行き不透明なこの状況を乗り超える予算といたしました。

加えて、カーボンニュートラルの実現に向けた事業など、第2次日光市総合計画後期基本計画を推進するための事業に、財源を重点配分するとともに、市内経済の活性化と公共施設マネジメントの推進を図るため、普通建設事業費の予算を拡充したところです。

この結果、令和6年度の一般会計予算案は、前年度当初予算と比較して8.7パーセント、36億6,000万円の大幅増となる、457億1,000万円としたところです。

なお、国民健康保険事業など7つの特別会計の予算につきましては、前年度と比較して4.1パーセント増の194億1,706万9,000円といたしました。

また、公営企業会計の水道事業は、瀬尾浄水場中央制御盤更新事業の完了などにより、0.8パーセント減の36億1,134万6,000円とし、下水道事業については、藤原元町中継ポンプ場ポンプ更新事業の完了などにより、0.5パーセント減の43億7,874万5,000円といたしました。

主な施策展開

(1)まちづくりの重点施策

後期基本計画においては、定住人口の減少が進む中、「まちづくり人口の充実」に向け、3つのプロジェクトを位置付けています。

魅力いっぱいプロジェクト

国内外に向けた観光プロモーションを積極的に展開するとともに、デジタルコンテンツを活用した教育旅行誘致や国内最大級の観光展におけるPRなど、観光誘客を推進してまいります。

また、産業基盤の確立を目指し、新たな企業の進出を促進するとともに、日光産米の販路拡大に向け、インターネット販売に要する費用に対する助成制度を創設するなど、市内産業の活性化を推進してまいります。

さらに、官民連携の推進体制強化を図るために設置した、「スマートワークライフ#NI(スマートワークライフにっ)KKO(こう)」が実施するワーケーションツアーの造成や交流会の開催などへの支援を充実させることで、活動人口の獲得に向けて取り組んでまいります。

ゼロカーボンシティの実現に向けては、先行地域において再生可能エネルギー、省エネルギー設備の導入を重点的に促進することで、二酸化炭素排出量の削減を目指すとともに、広大な面積を有する森林の間伐など、森林資源の再整備を促進することで、吸収量の増加につなげてまいります。

人がつながるプロジェクト

高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを継続することができるよう、地域ケア会議の体制充実をはじめ地域とのネットワークづくりなどを推進することで、地域包括ケアシステムの機能強化を図ってまいります。また、市民による地域づくりを推進するため、集落支援員を拡充するとともに、地域まちづくり協議会内の連携強化や活性化を促進してまいります。

未来かがやくプロジェクト

学力調査の対象を小学校低学年まで拡大して実施することで学力の向上を図るとともに、いじめや不登校の相談業務の初期対応力の向上を目指し、教員に対する専門家による講習会や研修会を開催してまいります。また、中学校において部活動指導員の配置を目指すとともに、地域移行に向け、関係者の皆さんとの協議を進めてまいります。

(2)まちづくりの基本施策

未来を拓きこころを育む、教育のまちづくり

生涯学習・社会教育

市内全小中学校に設置した学校運営協議会を中心に、地域住民等の学校運営への参画、支援、協力を促進することで、学校を核とした地域づくりを進めてまいります。また、新文化会館のあり方についての検討を行うとともに、中央公民館の商業施設への移転に着手してまいります。

学校教育

英語によるコミュニケーション能力を育成するため、幼少期からの英語体験や小中学生への英検助成を行うとともに、児童生徒のICT活用の意欲向上を図るため、中学校のプログラミング教育へのオンライン教材の導入を進めてまいります。また、教育環境の向上を図るため、小中学校の特別教室へのエアコン設置を進めてまいります。

文化財

文化財の保存、活用に向けた計画の策定に着手するとともに、12月の日光の社寺世界遺産登録25周年や令和7年度の日光杉並木植樹400年を見据え、関係機関等との更なる連携強化を図ってまいります。

スポーツ

ライフステージに応じたスポーツ活動を推進するため、ボッチャ大会の開催やニュースポーツ普及のための指導者養成を行うとともに、スポーツによる健康増進を図るため、働く世代の運動の習慣化を促進する事業に取り組んでまいります。また、6月には、市民の健康増進や体力づくりを目的に、新たなマラソン大会「NIKKO RUN 2024」を開催いたします。

健やかで人にやさしい、福祉と健康のまちづくり

社会福祉

社会福祉協議会や公共職業安定所と連携し、生活困窮世帯の自立促進や貧困の連鎖防止を図るとともに、複雑化、複合化する支援ニーズに対応する重層的支援体制の構築に向けて準備を進めてまいります。

子育て支援

令和6年度中の開園を目指し、今市地域の新たな保育園の整備工事を進めるとともに、認定こども園の整備を支援してまいります。また、4月から設置する子ども家庭センターにおいて、児童虐待防止への対応や妊娠期からの切れ目のない支援を強化するため、新たな業務に対応したシステムを導入して相談支援体制の充実を図るほか、ヤングケアラーに関する啓発や関係者への講習会等を実施してまいります。

高齢者福祉

高齢者とその家族に必要な支援の検討を行う地域ケア会議の充実を図るとともに、地域で支え合うための人材の育成を進めてまいります。また、介護支援専門員等の資格更新に対する助成制度を創設することで、安定的な介護人材の確保に努めてまいります。

障がい福祉

就労継続支援A型事業所の新設に対する支援を行うとともに、中山間地域の障がい福祉サービスの持続を目指し、サービス提供事業者の運営費に対する助成制度を創設してまいります。

健康・医療

保健指導や医療機関への受診勧奨等により、糖尿病の発病や重症化の予防、人工透析への移行を抑制することで、健康寿命の延伸につなげてまいります。また、帯状疱疹予防ワクチン接種や乳房補整具の購入、在宅ターミナルケアに要する費用に対する支援制度を創設してまいります。

魅力と活力にあふれる、産業のまちづくり

観光

誘客の促進、市内経済の活性化を図るため、日光市観光協会の外部人材登用の支援や地域おこし協力隊の活用により、推進体制の充実を図ってまいります。また、魅力ある観光地づくりを推進するため、上鉢石や龍王峡の公衆トイレを整備するほか、市有温泉施設における温泉成分の分析調査を実施いたします。

農林水産業

農用地の集積、集約化と競争力のある産地の形成を目指し、圃場整備の促進や農業施設等の導入支援を行うことで、農業経営基盤の強化や生産能力の向上につなげてまいります。また、森林の整備促進や施業効率化に向けて、間伐材の搬出などへの助成制度の創設や人材確保・担い手育成等の支援を行うとともに、地域おこし協力隊の活用による森林経営管理事業の促進を図ってまいります。

商工業・雇用・労働

働く人の休み方改革につながる「ちょこっとスタバケ日光」を導入するとともに、起業、創業の促進に向け、起業後の事業継続のフォーローアップを強化してまいります。また、日光の食の魅力やカーボンニュートラルの取組を含めた新たな観光素材の情報提供を行う商談会の充実を図るほか、後継者の育成や販路拡大等の支援に取り組むことで、伝統工芸産業の再生や活性化を促してまいります。

快適で住みよい、居住環境のまちづくり

都市基盤整備

コンパクトなまちづくりを推進するため、都市計画マスタープランの改定や立地適正化計画の変更に着手するとともに、「まちなかリバースプロジェクト」において、今市中心市街地活性化の施策を検討してまいります。また、居住誘導区域内の低未利用地の活用促進に向け、候補地を選定した上で、道路等の施設整備の検討を進めてまいります。

道路・河川

防災拠点等へのアクセス道路や通学路の整備を進めるとともに、老朽化した橋りょう、トンネルの長寿命化を図るため、計画的な点検、予防保全型の維持補修を行ってまいります。

住宅・住環境

市営住宅の効率的な活用に向け、集約化や用途廃止を進めるとともに、空き家の利活用を促進するため、空き家バンクの積極的な活用や民間企業等と連携した取組の検討を進めてまいります。

交通政策

落合・猪倉・小来川地区のデマンド交通の予約システムにAIを導入することで、効率的な運行や利用者の利便性の向上を図ってまいります。また、市営バスの購入や民間事業者のバス更新に対する支援を行ってまいります。

暮らしを支える、安全・安心のまちづくり

防災・危機管理

自治会に対し地区防災計画の策定を積極的に勧奨するとともに、土砂災害特別警戒区域のデータの整備や公開型GISへの搭載を進めてまいります。また、避難行動要支援者への災害時の対応をより確実なものとするため、情報を一元化するシステムを導入し、個別避難計画の再構築を図ってまいります。

消防・救急

地域消防力の強化を図るため、消防団の分団等の再編を踏まえ、詰所を計画的に更新するとともに、高規格救急自動車やはしご付消防ポンプ自動車の更新などにより、救急・救助体制の充実を図ってまいります。また、電波不感地帯解消のため、消防救急デジタル無線中継局の増設に着手してまいります。

防犯・交通安全・消費生活・生活環境

交通安全教室の教材を充実するなど、更なる交通安全意識の醸成や高齢者を中心とした受講者の増加を図ってまいります。また、運転免許証の自主返納者に対する支援として、交通系ICカードを加えることで、高齢者の免許証返納や公共交通利用を促進してまいります。

自然と共生する、環境のまちづくり

環境保全

環境教育の更なる推進に向け、市内中学校における総合的な学習の時間連携事業の充実を図るとともに、温室効果ガス排出削減に向け、公共施設への再生可能エネルギー導入の検討や公用車のEV・HV車両への更新を進めてまいります。

資源循環

生ごみ処理機の設置促進や食用廃油の回収拠点の拡大などにより、更なるごみの減量化を図るとともに、リサイクルセンターの包括運営管理への移行に向けて準備を進めてまいります。

(3)まちづくり推進の視点

シティプロモーション

ブランディングコンセプト「NEW DAY,NEW LIGHT.日光」を市民へより浸透させるため、「隠れすぎ遺産」の県内情報誌の特集ページ掲載や、観光等で来訪する方々に向けた「CHOCOTTO NIKKO」のPRなど、日光市の魅力を積極的にプロモーションしてまいります。

市民との協働

新たな担い手の育成や市民活動団体に対する各種支援、情報の共有や意見交換を行うことにより、活動の活性化を図るとともに、市民・行政・企業等の連携・交流を推進し、市民参画機会の充実を図ってまいります。

地域づくり

移住定住の促進に向け、市外からの転入者の住宅取得や移住検討者の現地見学に要する交通費に対する助成制度を創設するとともに、若者の出会いの創出や結婚新生活への支援を行うことで、日光暮らしの魅力向上を図ってまいります。また、地域おこし協力隊を活用し、地域と移住者、移住検討者をつなぐ交流の場を創出してまいります。

人権尊重・男女共同参画社会

LGBTQなど性の多様性への理解促進を図るため、中学生を対象とする講演や事業者向けの研修会を実施してまいります。また、更なる女性活躍の推進を目指し、デジタルワーク人材の育成を拡充するとともに、受注体制の構築に向け専門人材を登用するなど、スマートワークウーマンプロジェクトの充実を図ってまいります。

国際化

外国人の生活を支援するため、国や国際交流協会と連携し、外国人雇用事業者への情報提供を行うとともに、国際交流員を登用することで、相談体制の充実を図ってまいります。また、増加傾向にある外国人の児童生徒に日本語指導を行う学校指導助手を配置してまいります。

行政経営

「行政事務の効率化」については、庁内ネットワークの再構築や通信回線の増強を図るなどの環境整備を行うことで、行政事務のDXを推進するとともに、窓口案内業務について、一部民間委託を導入することで、市民サービスの向上に努めてまいります。

人件費・物件費の削除

物価高騰や賃上げの影響を受け、大きく増加する中においても、三役の給料及び一般職の管理職手当の削減を継続するとともに、指定管理施設の更新に際し、抜本的な見直しを行うことで、施設運営の適正化を進めてまいります。

使用料等の見直し

物価高騰の中、市民の皆さんへの過度な負担増に配慮した上で、受益者負担の適正化を原則とし、主に下水道使用料や温泉使用料などの検討を進めてまいります。

新たな財源の創出

ふるさと納税による増収や未利用財産の処分などを進めることで、財源の確保に取り組んでまいります。

公共施設マネジメントの推進

用途廃止している市営住宅等の除却や集会所の譲渡を進めるなど公共施設総量の圧縮を図るとともに、公共施設の利活用について、民間企業のニーズも含め、その可能性を調査することで、積極的な民間活力導入に向けた基盤づくりを進めてまいります。

感染症対策

昨年5月に感染症法上の5類に位置付けられた新型コロナウイルス感染症について、ワクチンの定期接種化など国の動向を注視し、適切に対応してまいります。

(4)物価高騰対策

物価高騰への対策については、令和5年度の補正予算と令和6年度予算を一体のものとして、迅速に取り組むことといたしました。

令和5年度の補正予算を活用し実施する「プレミアム付き共通商品券発行事業」や「小中学校の給食費の全額助成」などのほか、「ごみ袋の無償配布」を昨年度に引き続き行うとともに、保育園、認定こども園の第2子の保育料と副食費の無償化を実施することで、市民の生活を支援してまいります。

結びに

今年は、60年に一度の「(きのえ)(たつ)」に当たることから、「新しいことに挑戦して成功する」、「これまでの努力が実を結ぶ」年であるとも言われています。

60年前は、高度経済成長期を背景に、多くの人が夢と希望を胸に抱き、地方の活性化と賑わいをもたらした人づくりの時代でもありました。近年、人口減少やコロナ禍などの影響により地域経済が低迷する中、60年前と同様に、次代を担う若者や女性が活躍し、成長し続けられる環境を整えていかなければなりません。

このような中、栃木県教育委員会の「第三期県立高等学校再編計画」では、市内高校3校の統合が示され、廃校による地域の衰退が懸念されるといった新たな課題が生じてきています。高校は、その地域の活力そのものであり、高校生をはじめとした若者が様々な場面で地域との関わりを持ち、コミュニケーションを図ることで、地域の新たな力が生まれてくるものと考えています。

一方、G7関係閣僚会合の開催を契機に着手した、デジタルと融合させた女性活躍推進プロジェクトを拡充し、新たな産業として育成していくことも、働く世代、特に女性の人口減少が課題である当市において、取り組むべき重要な施策であります。

また、男女共同参画、女性活躍の推進には、子育てや移住定住の支援の充実が必要であります。これらの取組をパッケージ化し、市内外に「日光子育てチャンネル」、「日光暮らしチャンネル」として発信することで、更なる日光市のイメージ醸成を図りたいと考えています。

これらの取組を通じ、子育てや働くといった視点で女性からの憧れを生むまち、まちづくりや地域づくりといった視点で若者の興味を引くまち、こうしたまちにしていくことが、将来にわたり光り輝く日光市の創造につながるものと確信しております。

日光市で働く女性、日光市で活動する若者が様々な場面で活躍することで、人口減少により地域の衰退が懸念される厳しい状況にある日光市を明るく一変させることができると信じ、「夢と希望」にあふれる日光市の創造に向け、全力を尽くして市政経営に取り組んでまいります。

議員各位並びに市民の皆さんのご理解、ご協力をお願い申し上げまして、令和6年度の施政方針といたします。

 

この記事に関するお問い合わせ先

企画総務部秘書広報課秘書係
電話番号:0288-21-5133
ファクス番号:0288-21-5137
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