令和5年度施政方針
市政経営の基本方針
私が市長に就任させていただいてから、1年9か月が経過しようとしています。
この間、人口減少、少子高齢化の進行や先行きが不透明な財政状況など、様々な課題が山積している当市において、持続可能な行政経営を確立させ、「夢と希望」にあふれ、将来にわたり光り輝くことができる日光市を創り上げていくことを目指し、施策を展開してまいりました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症に加え、物価高騰による社会的、経済的ダメージは、私の予想をはるかに超えて大きく、その道のりの厳しさを痛感した、そんな1年9か月でもありました。
このような中、今年度から、第2次日光市総合計画後期基本計画をスタートさせました。
私は、この計画の推進に当たり、「夢と希望」が持てるまちをつくりあげていくために何が必要なのか、日光市を子や孫の世代につないでいくために何に注力していくべきなのか、そして、私の政治信念である「まちづくりは市民の皆さんと一体となって進めていく」ためにどのように施策を展開していくべきなのか、これらを念頭に様々な事業に取り組んでいるところです。
令和5年度は、後期基本計画の2年目であります。「選択」と「集中」をキーワードに、更にギアを一つ上げ、重点プロジェクトをはじめ、各節、各分野に掲げた重要施策を積極的に推進してまいります。
令和5年度予算編成の基本的な考え方
国においては、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつある一方で、原材料やエネルギーの価格高騰など経済環境の厳しさが増していることから、物価高騰への速やかな対策を行うとともに、危機的な状況である少子化への対策を強力に進め、デジタルやグリーンなど成長分野への投資を促進し、持続可能で一段高い成長経路に乗せていくことを目指すとしています。
当市においては、コロナ禍による影響や長引く原油価格・物価高騰に対し、市民生活や経済活動の回復に向けた支援はもとより、観光をはじめとする産業振興や働き方改革の推進、地域の活性化や教育環境の向上など、後期基本計画の重点プロジェクトや重要施策を具現化する予算といたしました。
また、2050年ゼロカーボンシティの実現や、来たるG7関係閣僚会合の開催を契機とした女性活躍推進に向けた新たな取組などに、予算を重点的に配分したところです。
さらに、将来を見据えた行財政改革の推進のため、公共施設マネジメントに基づく施設の解体や整備を進めるとともに、デジタル技術を活用した行政サービスの充実を図ることといたしました。
この結果、令和5年度の一般会計予算案は、前年度当初予算と比較して1.0パーセントの増となる、420億5,000万円としたところです。
なお、国民健康保険事業など7つの特別会計の予算につきましては、前年度と比較して0.4パーセント減の186億4,826万5,000円といたしました。
また、公営企業会計の水道事業は、浄水場施設整備事業費の増加などにより、3.0パーセント増の36億3,948万5,000円とし、下水道事業については、ポンプ場建設改良費の増加などにより、8.8パーセント増の44億21万円といたしました。
主な施策展開
(1)まちづくりの重点施策
後期基本計画においては、定住人口の減少が進む中、「まちづくり人口の充実」に向け、3つのプロジェクトを位置付けています。
魅力いっぱいプロジェクト
首都圏をターゲットとしたシティプロモーションや観光商談会を実施するとともに、当市の観光資源を事前に学習するためのデジタルコンテンツを制作し、教育旅行で当市を訪れる方々に対する誘客促進を図ってまいります。
また、獨協医科大学日光医療センターが開院した日光産業団地については、周辺環境と調和した産業集積地を目指し、今年度策定した誘致基本方針に基づき、私がトップセールスに赴くなど、企業誘致を積極的に展開してまいります。
さらに、日光産米の更なるブランド化、販路拡大に向け、施設整備や機械購入等に対する支援を行うとともに、ワーケーションやサテライトオフィスの定着を目指し、一元的な情報収集・発信のためのポータルサイトの作成などを実施いたします。
加えて、カーボンニュートラルの実現を目指し、環境省の脱炭素先行地域の選定に向けて取り組むとともに、再生可能エネルギー導入のためのゾーニング調査を実施するなど、様々な事業を展開してまいります。
人がつながるプロジェクト
必要な方に適切な福祉サービスを提供できるよう、地域包括ケアシステムの機能強化を図ってまいります。
また、地域まちづくり協議会による地域力向上を図るため、協議会活動に対する助成制度を創設するとともに、集落支援員を配置することで、地域課題の把握やまちづくり協議会の活動を支援してまいります。
未来かがやくプロジェクト
今年度から実施している市独自の学力調査を継続するとともに、校務支援システムの運用を開始することに加え、学校支援員を引き続き配置することで、教員が授業に専念できる環境を整備するなど、日光市で学ぶ子どもたちの確かな学力を育成してまいります。
また、教育支援センターを移設することで、相談体制の充実や学習支援の個別最適化を図ってまいります。
(2)まちづくりの基本施策
未来を拓きこころを育む、教育のまちづくり
生涯学習・社会教育
4月から市内の全小中学校に設置する学校運営協議会を支援するため、専門的な知識を有する社会教育指導員を新たに配置するとともに、地域、家庭、学校が効果的に連携することにより、地域で活躍する人づくりを進めてまいります。また、新たな文化会館の整備に向けて、市民との対話や議会との協議を重ねながら準備を進めてまいります。
学校教育
国際化に対応したコミュニケーション能力の醸成を図るため、幼稚園・保育園への英語講師派遣や小学校高学年からの英検助成を行うとともに、ICT専門の学校指導助手を中心に、教職員のデジタルスキルの向上を図ってまいります。
文化財
世界遺産や産業遺産の有効活用を図るため、宇都宮大学と連携し、デジタル映像技術等の活用に関する調査研究を進めるとともに、世界遺産「日光の社寺」の保存管理計画と整備活用計画の見直しに着手するなど、世界に誇る文化遺産としての環境整備等に向けた取組を進めてまいります。また、市内各所に存在する埋蔵文化財の区域などをGISに搭載し、ホームページ上で公開することで、更なる利便性の向上を図ってまいります。
スポーツ
ライフステージに応じたスポーツ活動を推進するため、あらゆる年代で楽しむことができるボッチャの普及を目指し、市内大会を開催するとともに、市内小中学校にボッチャの用具を配備してまいります。また、スポーツ協会等の関係団体と連携し、各種大会を開催するなど、広くスポーツ活動の機会を創出してまいります。
健やかで人にやさしい、福祉と健康のまちづくり
社会福祉
社会福祉協議会と連携し、自立相談や家計改善、就労準備等を支援することで、生活困窮者の自立を促進するとともに、複雑化、複合化した相談に対応する重層的支援体制の整備に向け、専門的な人材を活用するなど、準備を進めてまいります。
子育て支援
今市地域の保育園の整備工事に着手するとともに、ヤングケアラーの実態調査に基づき支援策を検討してまいります。また、妊産婦、子育て世帯、子どもへの一体的な相談支援を行う子ども家庭センターの開設に向けた準備を進めてまいります。
高齢者福祉
福祉、医療、保健などの専門職や、地域に関わる様々な職種の関係者が相互に連携を図ることで、高齢者が地域において自立した生活を継続することができるよう、地域ケア会議の充実を図ってまいります。
障がい福祉
障がい者の雇用機会の拡大や障がい福祉サービスの提供体制の充実を目指し、施設整備に対する助成制度を見直すことで、就労継続支援A型、就労移行支援、児童発達支援サービス事業所の誘致を促進してまいります。
健康・医療
保健指導や医療機関への受診勧奨等を行うことで、糖尿病の重症化や人工透析への移行を防止するとともに、日光ヘルスケアネットと連携し、医療機関の機能分担や業務連携を推進するなど、安定的な医療提供体制を確保してまいります。
魅力と活力にあふれる、産業のまちづくり
観光
持続可能な観光地域づくりを進めるため、DMO登録を目指す日光市観光協会の外部人材登用を支援することで、観光推進体制の更なる充実を図るとともに、観光施設の利便性や魅力の向上に向け、龍王峡駐車場のトイレや足尾銅山観光の再整備などに取り組んでまいります。
農林水産業
効率的な農業を促進するため、デジタル技術の導入を支援し、スマート農業の普及を図ってまいります。また、森林政策を推進していくため、地域林政アドバイザーの登用や育成を図るとともに、林業就業者の引越費用や家賃に対する補助制度、クマやシカ等による剝皮防止のための支援制度を新設するほか、「日光の木」の利用促進に向けた助成制度を拡充いたします。
商工業・雇用・労働
企業の事務所やコワーキングスペースの設置に対する助成を行うなど、雇用機会の創出や企業の定着促進を図るとともに、市内食品関連事業者の商品の販路拡大に向け、東京都内において「食の魅力展」を開催いたします。
快適で住みよい、居住環境のまちづくり
都市基盤整備
立地適正化計画に基づくコンパクトなまちづくりを推進するため、居住誘導区域内の未利用地の活用に向け、具体的な区域の選定を進めるとともに、若年夫婦や子育て世帯の区域内への転居に対する助成制度の活用を促進するなど、居住誘導を図ってまいります。
道路・河川
橋梁、トンネルの定期的な点検や計画的な補修を実施するとともに、市道大谷向~豊田線等の整備を進めるなど、安全、安心な道路ネットワークの構築を目指してまいります。
住宅・住環境
市営住宅の効率的な運営を図るため、移転補償制度の活用などにより、市営住宅の集約化を進めるとともに、空家の適正管理の促進に向け、解体等に対する助成制度を拡充してまいります。
交通政策
効率的、効果的な公共交通の確保に向け、市営バス路線を見直すとともに、足尾地域の自家用有償バスについて、地域ニーズに応じた車両に更新いたします。
暮らしを支える、安全・安心のまちづくり
防災・危機管理
地区防災計画の策定を促進するなど、自助・共助による地域防災力の向上を図ってまいります。
消防・救急
消防団の分団等の統合に伴い、新たな詰所を整備することで、地域消防力を維持するとともに、冬季山岳救助のための資機材の整備や高規格救急自動車の更新などにより、救急・救助体制の充実を図ってまいります。
防犯・交通安全・消費生活・生活環境
特殊詐欺被害等防止ための啓発や高齢者を対象に交通安全教室を開催するなど、消費者被害の防止、交通安全意識の醸成を図ってまいります。
自然と共生する、環境のまちづくり
環境保全
自然とのふれあい体験や環境保全活動を実施するなど、環境教育・環境学習の充実を図ってまいります。また、脱炭素社会の実現に向け、公共施設等への再生可能エネルギー導入調査を実施するとともに、EV、PHV、住宅用蓄電システムの購入に対する支援を拡充してまいります。
資源循環
生ごみ処理機とフードシェアリングサービスを組み合わせた実証実験を行うなど、食品ロスの削減に積極的に取り組むとともに、事業系生ごみ処理機の設置に対する支援制度の創設や、家庭の食用廃油の回収など、更なるごみの減量化に取り組んでまいります。また、令和6年度からのクリーンセンターの運営委託の準備を進めるほか、暫定的に保管している放射性廃棄物の安全かつ適正な管理に努めてまいります。
(3)まちづくり推進の視点
シティプロモーション
「NEW DAY,NEW LIGHT.日光」のブランディングコンセプトのもと、当市の魅力を積極的にプロモーションするため、観光プロジェクトを展開するほか、市内の飲食、物産店と連携し、チョコレートを使った商品を「CHOCOTTO NIKKO」として、ブランド化するプロジェクトに取り組んでまいります。また、SNSとの連携や利便性の向上を図るため、ホームページを改修するなど、情報発信の機能強化を進めてまいります。
市民との協働
市民参画を推進するため、市民活動支援センターと連携し、活動事例発表や意見交換会を実施するなど、市民活動団体の資質向上や新たな担い手の育成につなげてまいります。
地域づくり
移住定住を促進するため、移住者によるコミュニティの構築や相談体制の充実を図るとともに、移住定住を専門的に担う地域おこし協力隊の登用に向けて準備を進めてまいります。また、足尾・栗山地域の賑わい創出や小来川地区の公共施設の活用、集約など、地域の活性化に向けて取り組んでまいります。
人権尊重・男女共同参画社会
女性活躍の推進に向けて、女性を対象としたデジタルワークの人材育成や受注体制の構築に取り組むとともに、男性の家事スキルアップを支援してまいります。また、全ての人が多様な価値観を共有し、ともに生きる社会づくりに向けて、人権教育の推進やLGBTQの理解促進に努めてまいります。
国際化
年々増加している外国人市民の生活を支援するため、市内事業者との連携による情報提供体制を整えるとともに、国際交流協会と連携し、外国人市民とのコミュニティの構築や国際交流の推進を図ってまいります。
行政経営
「行政事務の効率化」については、庁内ネットワーク体制の見直し、オンライン申請システムの導入、GISを活用した各種図面データの公開などに取り組んでまいります。
「人件費・物件費の削減」については、引き続き、三役の給料及び一般職の管理職手当の削減を行うとともに、指定管理者制度の見直しや、照明設備のLED化による経常経費の削減などに取り組んでまいります。
「使用料等の見直し」については、補助金の適正化を進めるとともに、扶助費の見直しや受益者負担の適正化の方向性を早期に定め、行財政改革審議会に諮った上で、議会と協議を行いながら具体的な取組を進めてまいります。「新たな財源の創出」については、ふるさと納税の増収に努めるとともに、償却資産未申告調査の強化や、介護保険事業の見直しによる国庫支出金等の活用など、財源の確保に取り組んでまいります。
「公共施設マネジメントの推進」については、令和6年度からの10年間を計画期間とする第2期実行計画の策定を進めるとともに、施設の長寿命化に向けた予防保全の強化を図ってまいります。
感染症対策
発生から3年を経過する新型コロナウイルス感染症もいまだ収束には至らず、引き続き、感染拡大防止に取り組んでいく必要があることから、感染状況や国の対応方針などを踏まえ、迅速かつ的確に対応してまいります。
また、行動や社会活動の制限の緩和を踏まえ、地域の元気を取り戻すための取組を支援するとともに、対象者を拡大して実施しているインフルエンザ予防接種の助成を継続してまいります。
(4)物価高騰対策
これら後期基本計画に位置付けた施策を推進していくほか、昨今の物価高騰への対策に取り組んでいかなければなりません。
このため、家計支援や市内における消費喚起に向けて、全世帯に指定ごみ袋を無償配布するとともに、引き続き、プレミアム付共通商品券発行事業を支援してまいります。
また、給食の原材料費の値上げが保護者の負担増とならないよう、給食費に対する助成について必要な予算を確保するなど、適切に対応してまいります。
結びに
近年、人口減少や少子高齢化が進み、新型コロナウイルス感染症が収束に至らない中、ロシアによるウクライナ侵攻や円安等を起因とする物価高騰の波は、市民生活だけでなく、日光市の財政にも大きな影響を与えています。
一方で、コロナ禍にあっても、人の往来の規制が徐々に緩和され、昨年10月からはインバウンドが本格的に再開されるなど当市にとって追い風も吹き始めております。
また、国では、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを「5類」に引き下げるとしており、その対応は大きな節目を迎えております。
このような中、将来にわたり持続可能なまちを創造するためには、SDGsの視点を踏まえ、第2次日光市総合計画後期基本計画に掲げた重点プロジェクトや重要施策を、スピード感を持って、着実に進めていくことが不可欠であります。
計画の推進に当たっては、急速に発展しているデジタル化の波に乗り、デジタル専門人材を中心に庁内のDX化に積極的に取り組むとともに、オンラインを活用した市民サービスの更なる向上を目指してまいります。
さらに、テレワークを活用した働き方の定着による企業の誘導やデジタルワーカーの育成による仕事づくりなど、デジタルに着目した事業に積極的に取り組んでまいります。
また、当市は、令和3年12月に、「2050年ゼロカーボンシティ」を宣言しており、国立公園をはじめとする豊かな自然を有する奥日光を先行地域と位置付け、国の選定を目指すとともに、広大な市域におけるそれぞれの地域特性に応じた脱炭素の実現のための方向性を定めてまいります。
カーボンニュートラルを達成するためには、当市の広大な森林を活用していくことが肝要であることから、森林に関する施策の充実を図るとともに、環境と林政を一体的に担う部署を新設し、専門的に取り組む体制を整えることといたしました。
6月24、25日には、日本で初となる、「G7男女共同参画・女性活躍担当大臣会合」が当市で開催されます。世界の要人を当市にお迎えし、国・県と連携しながら会合の成功に万全を期すことはもとより、会合を好機と捉え、当市の男女共同参画・女性活躍の取組を推し進めたいと考えております。
私は、G7関係閣僚会合の開催が決定した後の昨年10月に、内閣府が主宰する「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」に参加いたしました。
現時点では、女性が活躍できる環境を十分に整備できているとは言い難い状況でありますが、私自らが先頭に立ち、男女共同参画・女性活躍の分野でリーダー的役割を果たしていきたいと考えております。
コロナ禍、ウクライナ問題、人口減少、少子高齢化など様々な危機を抱えるこの混迷の時代に、未来にわたり持続可能で安定した生活をするための基盤を築き、市民の皆さんが「夢と希望」にあふれ、「愛着」と「誇り」を持って暮らすことができるよう、積極的に対話を重ね、全力を尽くして市政経営に取り組んでまいります。
議員各位並びに市民の皆さんのご理解、ご協力をお願い申し上げまして、令和5年度の施政方針といたします。
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更新日:2024年02月01日