令和4年度施政方針
市政経営の基本方針
まちづくりは、市民の皆さんと一体となって進めていくことが不可欠であるという政治信条のもと、対話を重ねながら、様々な改革にチャレンジし、「夢と希望」があふれる新たな日光市を創り上げていくことが、私の役目であると考えております。
このためには、行財政改革に基づく財政健全化に取り組み、「選択」と「集中」による市政経営を進めていかなければなりません。
当市の財政は、昨年10月に見直した「長期財政の収支見通し」において、人口減少などを背景に歳入の減少が見込まれることや、今後想定される大規模事業に150億円を超える費用が必要になることなど、依然として厳しい状況にあります。
このようなことから、経常収支比率の改善や財政調整基金残高の確保に向け、施策の必要性や効果を検証し、事務事業を見直すとともに、第2次日光市総合計画後期基本計画に位置付けた重点プロジェクトや各分野の重要施策に重点的に取り組んでまいります。
令和4年度予算編成の基本的な考え方
国においては、引き続き医療提供体制を強化し、新型コロナウイルスのワクチン接種を促進するとともに、デジタル化やグリーン社会などの実現に向け、持続的な成長基盤を作っていくとしています。
当市におきましても、新型コロナウイルス感染症の対策にしっかりと取り組むとともに、デジタル技術の活用やカーボンニュートラルの推進を図るなど、時勢を捉えた予算編成を行ったところです。
また、総合計画後期基本計画のスタートを切る重要な年であることから、事業の重点化を行い、各分野の重要施策を具現化する予算といたしました。
一方、持続可能な財政基盤の確立に向け、内部経費の削減に優先的に取り組み、これまで以上に財政健全化に力を入れたところです。
具体的には、公共施設マネジメントの推進による施設の維持管理費用の圧縮や、管理職手当の見直しなどによる人件費の削減を進めるほか、特別会計の健全化などに取り組むことといたしました。
この結果、令和4年度の一般会計予算案は、前年度当初予算と比較して1.5パーセントの減額となるものの、「選択」と「集中」による予算配分を行い、416億3,000万円の予算を確保したところです。
なお、国民健康保険事業など7つの特別会計の予算につきましては、前年度と比較して4.7パーセント増の187億2,479万2,000円といたしました。
また、公営企業会計の水道事業は、企業債償還金の減少などにより、2パーセント減の35億3,318万6,000円とし、下水道事業については、ほぼ前年度並みの40億4,526万9,000円といたしました。
主な施策展開
(1)まちづくりの重点施策
後期基本計画においては、定住人口の減少が進む中、「まちづくり人口の充実」に向けた施策を進めていくこととし、この実現に向け、まちづくりの重点施策として、3つのプロジェクトを推進してまいります。
魅力いっぱいプロジェクト
「NEW DAY,NEW LIGHT.日光」をブランディングコンセプトとした上で、市の基幹産業である観光業を始め、商工業や農林業などが連携し、産業振興を推し進めることで、働く場を確保し、移住定住や二地域居住などにつなげていくための施策を展開いたします。
具体的には、SNSなどを活用した「Route.N」観光誘客プロモーション事業や、首都圏で実施する発地型の観光商談プロモーション事業のほか、日光産のコメを活用した新たな商品開発や付加価値の創出、販路拡大に向けた事業に取り組みます。
また、日光産業団地の利活用を促進するための検討を進めるとともに、ワーケーションやサテライトオフィスの定着に向け、民間企業と連携した事業に取り組むほか、市外から企業を積極的に呼び込むための企業オフィス設置等推進事業を創設いたします。
さらに、昨年12月に表明した「2050年ゼロカーボンシティ宣言」を踏まえ、気候変動対策に取り組む部署を新設するとともに、カーボンニュートラルの実現を目指し、全体計画の策定に着手するなど、国の脱炭素先行地域の認定に向け取り組んでまいります。
人がつながるプロジェクト
市民の皆さんが安全安心に暮らし続けることができるよう、地域内で支え合える互助や共助のための取組を推進いたします。
具体的には、地域と医療、介護などが連携し、高齢者の日常生活や在宅医療を支援するなど地域包括ケアシステムの機能強化を図るとともに、様々な地域の課題を市民自らが解決できるよう、地域まちづくり協議会の設置を促進し、地域内で活動する様々な団体間の情報共有や解決に向けた協力体制を構築してまいります。
未来かがやくプロジェクト
日光市内で学ぶ子どもたちが夢の実現や将来のまちづくりの担い手として成長できるような人材育成につながる取組を実施してまいります。
具体的には、全国規模の学力調査に加え、市独自の調査を実施し、その結果を児童生徒の学力に応じた授業づくりに反映させることで、子どもたちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びによる学力向上に取り組んでまいります。
また、一人ひとりの成長を支える教育環境を目指し、教育支援センターの機能をより一層強化し、不登校などに対する相談、支援体制の充実を図ります。
(2)まちづくりの基本施策
未来を拓きこころを育む、教育のまちづくり
生涯学習・社会教育
地域、学校、家庭が連携、協力しながら地域ぐるみで子どもを育てる体制を整え、地域の教育力向上や活性化を目指すため、学校支援ボランティア活動を支援するとともに、まずは、市内10校に学校運営協議会を先行導入した上で、市内全ての小中学校への設置を目指してまいります。
学校教育
これまで、国際化に対応したコミュニケーション能力の醸成を目指し、中学生への英検助成などに取り組んできた結果、中学3年生の英検3級の取得率が40パーセントを越えたところです。この成果を踏まえ、今後さらに、英語力の向上を図るため、英検助成の対象を小学校5・6年生に拡充するとともに、新たに未就学児が英語に触れる機会を設けるなど、幼少期から中学生まで一貫した英語教育に取り組んでまいります。
文化財
市内の各地域にある数多くの文化財を、それぞれの地域の魅力と捉え、活性化につなげていくことが重要となることから、文化財を巡る見学会を実施するとともに、市内小中学校における移動博物館を充実させてまいります。
スポーツ
ライフステージに応じて誰もが気軽にスポーツを楽しむことができるよう、ボッチャなどのニュースポーツに親しむ環境づくりを進めるほか、スポーツを通じた健康増進や生きがいづくりに向け、介護や健康の分野と連携した講習会などを実施いたします。
健やかで人にやさしい、福祉と健康のまちづくり
社会福祉
生活困窮者の自立を促すため、早期の段階から支援することが必要であります。このため、個々の困窮状況に応じた自立相談支援や家計の状況を適切に把握し改善意欲を高める家計改善支援、さらには、就職が困難な方の就労の可能性を高める就労準備支援の3事業について、社会福祉協議会との連携をこれまで以上に強化することで、より充実した支援体制を確立してまいります。
子育て支援
組織体制の見直しを行い、子ども家庭支援課と保育課を新たに設置し、役割の明確化と支援体制の強化を図ることとしました。また、「日光市保育施設整備計画」に基づき、今市地域の保育園の統廃合に向けた調査や設計を実施いたします。
高齢者福祉
高齢者が地域において自立した生活を継続することができるよう、福祉、医療、保健などの専門職が協働しながら地域ケア会議の充実を図ってまいります。
障がい福祉
「親なき後」に備え、引き続き相談支援体制の確保や一人暮らし体験の機会の創出などに取り組むとともに、支援する専門人材の育成や地域で支える体制を構築し、障がい者とその家族が安心して生活できる環境づくりを進めてまいります。
健康・医療
糖尿病の重症化や人工透析への移行を防止するため、健康教室や健康相談における保健指導、受診勧奨などを強化するとともに、医療機関の機能分担や業務連携を推進し、安定的な医療提供体制を確保していくため、救急医療などを行う拠点病院の支援を拡充してまいります。
魅力と活力にあふれる、産業のまちづくり
観光
「稼げる観光」の推進に向け、重点プロジェクトに掲げた事業に取り組むほか、市内観光地の周遊や、宿泊、滞在時間の延長を促進してまいります。具体的には、グリーンスローモビリティを活用した、日光地域西町周辺の回遊性をPRするとともに、豊かな自然を体験するアドベンチャーツーリズムの促進に向けた支援を実施してまいります。
農林水産業
農地の集積、集約を促進するため、農地中間管理機構などと連携するとともに、人・農地プランの目標を明確化するなど、競争力を高め、持続可能な農業の確立を目指してまいります。
商工業・雇用・労働
企業等の市内定着を図るため、引き続き、市内に工場を立地した場合に奨励金を交付するとともに、中小企業等の生産性や品質水準の向上、製品の高付加価値化に資する生産設備導入などを支援してまいります。
快適で住みよい、居住環境のまちづくり
都市基盤整備
観光客の周遊性や安全性の向上を図るため、日光地域東町、西町における道路の美装化など街なみ環境を整備するとともに、立地適正化計画に基づき、安全安心に暮らせるコンパクトなまちづくりを推進してまいります。
道路・河川
国の交付金等を活用し、防災拠点等へのアクセス強化や通学路等の安全確保のための道路改良事業を計画的に実施してまいります。また、市が管理する橋りょうやトンネルを定期的に点検するとともに、長寿命化に基づく予防修繕を計画的に行うことで、安全で安心な道路機能の確保に努めてまいります。
住宅・住環境
人口減少や高齢化などにより年々増加する空き家の有効活用や、民間老朽施設への対応など住環境に関する施策を一元的に所管する部署を新設し、課題解決に向け取り組むとともに、引き続き市営住宅の適正管理や有効活用に努めてまいります。
交通政策
広大な市域や高齢化の進行により大きな課題となっている移動手段の確保や、地域公共交通ネットワークの整備、さらには、観光繁忙期における渋滞対策など、交通政策を総合的に担う部署を新設するとともに、地域特性に応じた交通サービスを実現するため、地域公共交通計画を策定してまいります。
暮らしを支える、安全・安心のまちづくり
防災・危機管理
災害発生時に、それぞれの地域において、円滑な防災活動が実施できるよう、自主防災組織ごとの地区防災計画の策定を推進してまいります。また、防災士のスキルを維持するための研修を実施するほか、新たに資格を取得するための費用を支援してまいります。
消防・救急
地域の消防力を維持・強化するため、消防団分団等の再編を視野に、消防団詰所や消防設備等を計画的に更新するとともに、出動手当の拡充など待遇改善を図り、消防団員の確保に努めてまいります。
防犯・交通安全・消費生活・生活環境
引き続き、警察や消費生活センターなどの関係機関と連携し、高齢者を対象に、特殊詐欺や悪徳商法などの被害防止に向け取り組んでまいります。
自然と共生する、環境のまちづくり
環境保全
脱炭素社会の実現に向けて、市民一人ひとりの積極的な取組が重要となることから、自然環境について自ら学び、考え、行動できるよう、環境教育や自然体験学習を充実するとともに、引き続き、湧水ボランティアの支援や外来植物の除去など環境保全活動に取り組んでまいります。
資源循環
新たに食品ロス削減推進計画を策定し、食品ロスが引き起こす環境への負荷軽減や経済的損失の解消などに向けて、市民をはじめ、事業者などの意識改革を促すなど、更なるごみの減量化や資源化を進めてまいります。
(3)まちづくり推進の視点
シティプロモーション
コロナ禍の中、新たな生活スタイルに適合したブランドイメージを確立するため、「NEW DAY,NEW LIGHT.日光」をコンセプトに、様々なプロジェクトを展開していくこととしています。令和3年度に新たなプロジェクトとしてスタートした「CHOCOTTO NIKKO」の取組を深化させていくため、私が先頭に立ってプロモーションを展開するなど、魅力の創出に向け、戦略的に取り組んでまいります。
市民との協働
市民との協働のまちづくりをさらに推進していくため、市民活動団体の資質向上や、新たな担い手の育成に向け、市民活動団体、市民、行政などによる活動事例発表や意見交換会などを実施するシンポジウムを開催してまいります。
地域づくり
地域のコミュニティを維持し、活力ある地域づくりを進めるためには、地域の特性に応じて、市民が主体的に取り組むことが肝要であることから、引き続き、地域福祉や環境整備など自治会が行うまちづくり活動を支援してまいります。
人権尊重・男女共同参画社会
LGBTQの方々が差別を受けずに暮らすことができるよう、市民や事業者の皆さんへの周知啓発に取り組むなど、多様な性の在り方についての理解促進に努めてまいります。なお、人権尊重・男女共同参画社会については、全庁的な視点で取り組むことができるよう組織体制を見直すことといたしました。
国際化
外国人市民が年々増加していることから、こうした方々の生活を支援するため、相談体制の充実を図るとともに、外国人を雇用している企業と連携し、行政情報などを的確に提供してまいります。
行政経営
厳しい財政状況の中、効率的で、効果的な行政サービスを実現していくためには、更なる行財政改革を推進していかなければなりません。
このため、事務事業の見直しを積極的に進めるとともに、組織の最適化などにより、人件費や物件費の削減に努めてまいります。さらに、受益者負担の適正化に向けた検討を進め、施設の使用料や手数料などの見直しを実施してまいります。
一方で、ふるさと納税の増収に向け、多様な受付サイトを活用するとともに、私が率先して企業版ふるさと納税をPRするなど、既存の歳入の拡充を図るほか、新たな財源の創出についても検討を進めます。
また、包括連携協定企業を始めとした民間企業との連携を推進するなど行政事務の効率化を進めるとともに、デジタル専門人材を登用した上で、RPAの導入などデジタル技術を積極的に活用してまいります。
加えて、第2期公共施設マネジメント計画実行計画の策定を進め、継続的、計画的な公共施設の適正化を図るとともに、民間提案制度などを活用し、公共施設や未利用財産の有効活用などに取り組んでまいります。
感染症対策
依然として鎮静化しない新型コロナウイルスに適切に対処し、感染予防や感染拡大防止と持続的な社会経済活動を両立させていくことが求められています。
このため、3回目のワクチン接種を速やかに進め、市民の生命と健康を守るとともに、感染状況を見極めながら、市内経済活動の回復に向け、迅速かつ柔軟に事業を展開してまいります。
結びに
現在の日光市は、厳しい財政状況、加速化する人口減少や少子高齢化、新型コロナウイルス感染症による社会的、経済的な落ち込みなど、非常に大きな課題に直面しており、これは財政の健全化だけでは解決することが困難な状況にあります。
これらの局面を乗り越え、日光市を将来にわたって持続可能なまちにしていくためには、「人」を育み、「つながり」を深め、「愛着」や「誇り」を醸成していくことが不可欠です。
特に、日光市の将来を担う子どもたちの無限の可能性を伸ばし、安心して成長できる環境を整え、夢の実現や将来のまちづくりの担い手として育んでいくことに力を注いでいかなければなりません。国際化に対応できる英語教育を始めとした学力の向上や、多様な個性に対応したきめ細かな相談体制の充実など、子どもたちのために「何ができるか」、「何をすべきか」という視点を持って様々な政策を実現していくことにより、日光市が将来にわたって輝き続けることができるものと信じて疑いません。
さらに、子どもたちのみならず、安全安心に暮らすことができる生活環境を確保し、魅力ある地域資源を活かしたコミュニティを形成していくため、多様な活動に取り組む人材を育成していかなければなりません。また、地域経済を活性化させていくためには、地域に根差した産業を支える人材を育成していくことも重要であると考えます。
その上で、このような方々が互いに助け合い、連携を深めることで、地域への「愛着」や「誇り」を育み、ひいては、人口減少時代の厳しい日光市を支え、未来につながっていくものと確信しております。
一方、職員の意識を変革し、個の力を磨き上げ、全職員が一丸となって行政経営に取り組んでいくことも必要です。職員一人ひとりが、様々な課題を自覚し、解決策を導き出していけるよう、政策形成能力を高めるための取組を強化するとともに、課題解決に向けた組織体制を構築してまいります。
10月には、「いちご一会とちぎ国体」が開催されます。さらに、2023年先進7か国関係閣僚会合の誘致を栃木県とともに進めているところでもあります。
これらを契機に、「夢と希望」にあふれた新たな日光市を創り、子や孫の世代に引き継いでいけるよう、市民の皆さんと積極的に対話を重ね、全力を尽くして市政経営に取り組んでまいります。
議員各位並びに市民の皆さんのご理解、ご協力をお願い申し上げまして、令和4年度の施政方針といたします。
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更新日:2024年02月01日