日光の社寺:遺跡(文化的景観)

世界遺産に登録された「日光の社寺」の内容は、日光山内にある二荒山神社、東照宮、輪王寺の103棟の「建造物群」と、これらの建造物群を取り巻く「遺跡(文化的景観)」です。

文化的景観とは、自然現象と人間の活動とがお互いに影響しあって形成された環境ともいうべきもので、世界遺産を捉える視点として新たに設けられた概念です。
「日光の社寺」の場合は、遺跡として文化的景観が形成されていると認められたものです。

その遺跡の内容は以下のとおりとなっています。

江戸時代における歴史的役割を果たした日光山内

「日光の社寺」は、江戸時代初期に徳川幕府の創立者、初代将軍徳川家康公の霊廟である東照宮の造営によって、現在の建造物群がかたちづくられました。
その後は、代々の将軍の社参をはじめ、朝廷からの例幣使の派遣や、朝鮮通信使の参詣が行われるなど、江戸時代の政治体制を支えるための極めて重要な歴史的役割を果たしており、江戸時代の代表的な史跡のひとつとなっています。

宗教的活動空間と一体をなす石垣、階段、参道など

起伏が付いた石畳の参道が奥へとまっすぐ伸びている写真

また、東照宮と大猷院霊廟は、山の地形を利用して造営されており、石垣や階段によって境内を広く、または狭く見せたり、参道に曲折をつけて奥行きのゆとりや緊張を見せるといった工夫が施されています。さらに、大切な建造物になるにしたがってだんだん高いところに建てられたり、建造物も巧みに配置されたりして尊厳の風格を盛り上げています。
これらの地割や石垣等の造営は、日本の城郭建築で築き上げられた最高の建築技術で造営され、水道や排水設備も当時の最新の技術によって整備されました。

古代以来の日本的宗教空間を継承する山や森など

参道の両脇に参道に沿って背の高い杉の木が生えており、参道の奥には照宮の石鳥居が建っている写真

さらに、日光山内の山林地域は、8世紀に始まる日光の山岳信仰の聖域とされ、老樹の森林を形成しており、現在も境内の杉が御神木とされています。これらの景観は、特定の山や森を神格化しようとした、古代以来の自然に対する信仰が発生して以来の日本人の伝統的な自然観と深く結びついていて、今日まで伝えられてきたものです。日光山内の山林地域は、日本独特の神道思想との関連において、自然と社殿が一体となった文化的景観を形成するうえで不可欠な資産となっています。

このように、「日光の社寺」は建造物群だけでなく、これらをとりまく環境もそれぞれに意味や価値を持っており、一緒に世界遺産に登録されたわけです。世界遺産に登録された「日光の社寺」に欠かせないこの遺跡(文化的景観)をこれまでとは少し視点を変えて見つめなおしてみてはいかがでしょうか。

この記事に関する問い合わせ先

教育委員会事務局文化財課世界遺産推進係
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