渡邊綾香さん(起業)着物着付_茶道専門店代表
日光市移住者インタビュー
移住後に見つけたお気に入りのお店で食事を楽しむ渡邊さん
渡邊綾香さん
- 出身地・・・・千葉県野田市
- 転入前・・・・千葉県野田市
- 移住した年 ・・2025年7月
- 職業 ・・・・・着物着付_茶道専門店_恋衣(KOIKOROMO)代表
日本文化を通して日光の魅力を届ける ― 茶道体験と着付けの店「恋衣(KOIKOROMO)」を開くまで ―
茶室の掛け軸に書かれた「一期一会」…お客様との出会いを大切にしています
日光市稲荷町。大谷川の瀬音が響く静かな住宅地に、日本文化を体験できる小さな拠点が誕生する。茶道と着付けを通して、日本文化と日光の魅力を伝える店「恋衣(KOIKOROMO)」。
自分らしい「おもてなし」で日本文化を伝える店を起業したいと日光へ移住した若き起業家渡邊さんにその熱意と想いを伺いました。
1|「敷居を下げたい」―屋号に込めた想い
店名の「恋衣(KOIKOROMO)」には、渡邊さん自身の“想い”が込められている。
「茶道というと、畳で正座をし、緊張感のあるイメージを持つ人も少なくありません。私自身も、初めて茶道を体験したときに、その“敷居の高さ”を感じた一人でした。だからこそ、若い人にも気軽に来ていただきたかったので、かしこまった名前にするのはやめようと思っていました。」
“恋”という言葉を選んだ理由は、カップルでも気軽に訪れてほしいということ、そして「衣(着物)に恋をする」意味も重ねている。
「親しみやすい名前にすることで、少し緊張するけど、来てみようかなって思えるのではないかと。」
屋号は、強いブランディングを前面に出すというよりも、「来てくれる人に委ねる感覚」に近い。
「この名前は、同世代の友人に「どんな名前なら来やすいか」を相談しながら決めました。」
2|日光は「自然と思い浮かんだ場所」だった
移住先として日光を選んだ理由は、自然と浮かび上がってきた場所だったという。
二社一寺をはじめ、鬼怒川温泉や川治温泉、湯西川温泉にも、小さい頃から毎年のように訪れていた場所だった。
「日光の温泉は単純温泉が多く、肌の弱い人にもやさしい泉質で、訪れるのが楽しみなお気に入りの場所でした。」
さらに学生時代には、日光市内のホテルで働きたいと思い、インターンシップにも参加した経験がある。その頃から、いつか日光に住んでみたいという漠然とした思いがあった。
恋衣(KOIKOROMO)ではお客様の希望に添うよう数多くの着物が用意されています
3|このお店を始めようと思った原点
現在の起業への原点となったのは、老人ホームでのアルバイト経験だという。
「人と関わることが好きで、これまでホテルのフロント業務、老人ホーム、児童保育などで、幅広い世代の方と接してきました。」
なかでも、老人ホームで出会ったご高齢の方々の言葉は、今でも心に深く刻まれている。
『若い頃に、やっておけばよかったと思うことがたくさんある』その言葉を聞いたとき、はっとした。
「長く生きていると、「やらなければよかったこと」よりも、「やらなかったこと」に強い心残りを感じるのだと教えてくれました。たとえ不安があったとしても、やりたいと思ったことには挑戦しよう。そう強く心に決めた瞬間でした。自分の生き方に大きな影響を与えてくれたその言葉に、今でも感謝しています。」
4|資格取得と、物件との出会い
社会人1年目。ホテルの仕事と並行して、学生の頃から習い続けていた茶道・着付け・華道の学びを深め、複数の資格を取得していく。
「新社会人として新しい仕事を覚えながら、習い事を掛け持ちする事は正直大変でした(笑)。」
日光の物件との出会いも突然だった。
「通勤中にネットで物件情報を見つけて、すぐ連絡してその週末に見に行ったら「欄間」がすごくすてきで。その場で“ここがいいな”って思いました。一目惚れです(笑)。」
茶器から「日光の歴史」などに触れるきっかけに
5|日光で暮らして見えた、現実と温かさ
実際に住み始めて感じたのは、自然の厳しさと、人の優しさの両方だった。
「移住したこの場所は近くに大谷川が流れ、四季の変化で姿を変える日光連山の美しい景色を眺める事ができる素敵な場所です!しかし住むとなると、夏は得体の知れない虫と戦い、冬は寒さとしもやけに耐える日々です(笑)。」
「茶道において『自然との調和』は、自然の中に身を置き、季節と共に生きる姿勢であるとされていますから、この土地はまさにその学びにふさわしい場所なのかもしれません。まだ生活上、不慣れな部分がたくさんありますが、そんな不安を払拭して下さるのがご近所の方々です。」
「草刈りや雪かきなどを助けてくださったり、野菜を分けてくださったり、分からない事があるとすぐに相談に乗っていただけるので、本当に心強くありがたいです。また、お店を開くにあたり、地域の皆様の温かいお言葉やサポートに大変感謝しています。」
6|日光だからこそ伝えたい、日本文化
「恋衣(KOIKOROMO)」では、茶道体験に日光の歴史を織り交ぜていく。
「茶道の話をしながら写真を撮ったり、日光東照宮に繋がる話を知っていただいて茶道体験してもらいたいんです。」
日光東照宮にちなんだ茶道具を揃え、二荒山神社の神紋などの話を交えながら、訪れる人の記憶に残る時間をつくる。
「この茶碗には“見ざる、言わざる、聞かざる”が描いてあるんです。日本の方は皆さんご存知ですけど、海外の方は東照宮のシンボル的なものっていうのをご存知ないので、これは人生そのものを描いているんだよっていうのを説明したくて・・・。」
単なる体験ではなく、「日光」をより深く感じる時間にしたいと考えている。
”三猿”が描かれた茶器・・・日光と日本文化を深く知ることができます
7|「一人ひとりと向き合う」ための店づくり
渡邊さんが繰り返し口にするのはこの言葉。
「一人ひとりのお話を丁寧に聞きながら、心のこもった『おもてなし』をしたいと思っています。」
効率や拡大よりも、密度を選ぶ。
「私一人で1日2名ほどの着付けをし、ゆとりを持って心から『おもてなし』ができる環境に身を置きたいと思ったんです。」
「今後も自分自身が日本文化についての学びを深め、技術を高める努力をすることで、より良い『おもてなし』に繋がるようにしていきたいです。」
8|次の誰かへ、バトンを渡したい
移住を考えるきっかけになったのは、かつて読んだ “日光暮らし” ホームページにあった“日光に移住した先輩のインタビュー”だった。
「“移住して自分が心から楽しいと思える仕事を見つけた”と書かれていた移住者インタビューを読んで、
勇気を貰えました。だから今度は、私の話が誰かの参考になればいいなと思っていて、日光に移住を考えている方にバトン渡したい気持ちなんです。勝手にいただいたつもり気になっているんですけど(笑)。」
おわりに
世界遺産のまち日光で、日本文化を伝える『おもてなし』によって人を繋げる体験を始めようとする渡邊さん。地域の方たちも彼女の前向きで熱い想いの実現を温かい目で見守っているようです。伝統を大事にしながらも新しいものを受け入れる寛容な地域性を日光は持っています。
着物姿で日光の社寺を散策されることもあるそう




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更新日:2026年05月26日